■幼姫無惨11(2)

コンコン…
ノックの音で目が覚める。

「んっ…」
「起きておられますか?」
部屋の外から声が聞こえた。いつの間にか横にいたはずの男はいなくなっていた。少女はぼんやりとドアの方を向いた。
「はい…」
「中に入ってもよろしいですか?」
「…はい」
こんな声のかけ方をするのは一人しかいない。主人の執事だけだ。
自分に何か用があるのだろうか?

カチャリ…
ドアが開く。
「え?」
執事とは違うもっと若々しい男性が部屋の中に入って来た。
「……姫様…」
誰?入ってきたのは…懐かしい顔。…昔…見た…
「クリス…?」
「…はい。姫様お久しぶりです」
にっこりと優しい顔で青年は微笑んだ。

そうだ…。自分の遊び相手として、また、勉強係としてずっと一緒にいた、宰相の息子…の…クリス。若い頃から神童と言われ、王の子供達が王位についた時、彼が陰となり日なたとなって補佐をする事が決められていた。そして生まれた時から決められていた自分の許嫁だ。彼とはあのクーデターの朝に会ったきり。

少女はベッドから急いで降り、青年の側に近寄った。
「クリス、無事だったのね」
「ええ。私は上手く逃げおおせたのです」
「…よかった。では宰相は?あなたのお父様…」
クリスは顔を曇らせる。
「王を慕っていた多くの者は捕らえられ将軍に処刑されました。その中には私の父も…」
優しげな青年の眉間や頬にはまだ、癒えたばかりの傷が数カ所残っていた。かなり苦労をしたのだろう。

「…ひどい傷。これはその時に?」
「いえ、その時のものもありますが、主に国を取り戻すために活動していた時についたものです」
少女はその傷の上を小さな手で優しく撫でた。
「そう…危険な目にたくさんあったのね。大変だったでしょう?」
「何をおっしゃっているのですか?姫様こそ、侍従の裏切りで大変な目にあっていたのではないですか」

クリスは改めて少女の身体を見、顔をしかめた。首には首輪。胸にはピアス。そして赤い皮のコルセット…
「ずいぶんひどい事をされていたのですね。早く私が姫を捜し出していれば…来るのが遅くなってしまって申し訳ありません」
「…そんな事…」
おもむろに上着を脱ぐとクリスは膚が見えないよう彼女の肩にかけた。

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