■幼姫無惨11(3)

「城に戻りましたらすぐにそれは外して傷が残らないように処置をいたしましょう。私が責任を持って国中を探して良い治療師を探し出して見せます。妻になる女性にこのような痕を残して置く訳には参りませんから」
「城?…戻る?だって…私は…」
この屋敷に金で買われてきたのだ。それに自分の戻る場所はもうないはずだ。

「あれからクーデターを起こした将軍は独裁政治を行ったのです。それはあまりにひどいもので、それに耐えかねた軍の将校や民衆が立ち上がったんですよ。将軍は海外に亡命しました。そして王位復興派が政権をとり返したのです。王族は姫様を除き、処刑されてしまいました。皆は姫様もすでにこの世の者ではないと諦めていましたが、一縷の望みをかけて探させていたのです。あの騒動の最中に欲に目がくらんだ侍従の一人に人買いに売られたと言う事はすぐに突き止めたのですが、その後姫様がどこに買われていったのかはなかなかわからなかったのです。もし買われていった先で転売されていたり生活の急な変化で亡くなられているのではないかと気が気ではありませんでしたが先日ここにいるという情報が手に入りやっとお迎えに上がる事が出来ました」
青年は少女の前に跪く。そして手を取って少女を見た。
「本当に…ご無事でなによりです。大変に遅れてしまい、申し訳ありませんでした」
そう言ってうやうやしく頭を下げる。

「気にしないで、クリスは一生懸命私を捜し出してくれたのでしょう?ここにこうやって来てくれただけでも私は嬉しいわ」
「…勿体ないお言葉です」
青年は立ち上がった。
「さて、姫様。こんな所でのんびりしている訳には参りません。急いで国に帰る準備をなさってください」
「え?でも、ご主人様が…」
「ご主人様?…ああここの家の主人ですね。大丈夫ですよ。この屋敷の主人には姫様を買った時の倍額を渡しておきました。ですから姫様はもう自由の身です」
「国に…帰れるの?…私…」
「もちろんですよ。そのために私がここに来たのです。ご安心下さい。ここに来ているのも、私と口の堅い信用の置ける数人の侍従達ばかりです。姫がここで何をされていたかは絶対に他の者には伝わりません。さ、急いで支度を…」
青年はトランクをベッドの上に置き、それを開ける。中には下着やドレスが丁寧にたたまれて入っていた。

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