■幼姫無惨11(5)

「ご主人様…私…私…きゃっ」
馬車が激しく揺れて少女は窓枠にしがみつく。激しい揺れが収まり、もう一度外を見た時には馬車はすでに屋敷から遠く離れた後だった。
涙がこぼれてくる。帰りたいと思っていても帰れないと思っていた。ずっと男の慰み者として生きていくのだと思っていた。それが…急に…こんなに急に

「皆、姫様が戻られるのを待ち望んでおられるのですよ」
皆も自分を喜んで迎えてくれる。何から何まで嫌な事なんてないはずなのに。嬉しいはずなのに…また、あの平和な国に戻れるというのに…。どうして…どうしてこんなに胸が苦しいのだろう。

「行ったな…」
「はい」
男は窓から外を見ていた。
「…これで新しい娘を買わなければいけなくなってしまった」
「旦那様はかなりお気に召されておいででしたからね」
「ふん。あの娘が妙に懐くから側に置いてやっただけだ。娘を迎えに来た男はかなり金を置いていったからな。次はもっといい女を買う事にするさ」

「ところで旦那様」
執事は主人に声をかける。
「何だ?」
「最後に会わなくてもよろしかったのですか?」
「…会ってどうする?私はあの娘を奴隷として扱っていた男だぞ。やっと元の国に戻れるのだ。私の事など会いたくもないだろう?」
「旦那様を必死で呼んでましたが?」
「空耳だ」


数日後─────
ゆくえ知れずだった某国の姫が見つかり、一年ぶりに帰国する途中何者かに胸を刺されたというニュースが男の屋敷に舞い込んできた…

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