■幼姫無惨12(1)

それから半年が過ぎた。

男は食事を終え、デザートを所望する鈴を鳴らす。がらがらとキャスターを移動させながらその屋敷の執事が主人の元にやってくる。キャスターにはかなり大きなふたがされており、その中にあるデザートの量もかなりのモノと伺える。男はそれを見た途端に顔を険しくした。

「何だ?しばらくそれは必要ないと言っておいただろう?」
「そうはおっしゃられますが、私は旦那様に元気になって頂きたいのです」
「何を言う。私はこの通り元気だし、別に病気でも何でもないぞ」
「何をおっしゃいます。あの娘の後新しい娘を私が見つけて買ってきても誰も抱こうとはなさらずにすぐに売ってしまわれているではありませんかそれのどこが元気があるとおっしゃられるので?」

執事の買ってきた女は確かにいい女達だったのだ。前の男ならしばらく可愛がる位の事はしただろう。彼女が死んでしまったのは可哀想だったがこれも運命だったのだ…そう思い込む事にし、他の女を買ってはみた。しかし、いざ抱こうとするとあの娘の顔が脳裏に甦って途端に抱きたい気持ちが失せてくる。

「いいではないか。単に女に飽きただけの事。今はただ単に女を抱く気がないだけだ。その内にまた欲しくなる。気にするな」
刺された姫は数日後に息を引き取ったという事を風の噂で聞いた。娘を元の所に返すのが彼女の幸せだろう。そう思い男は彼女を手放した。平和な国になったと言う事も青年から聞いた。まさか命を狙われる危険があったとは…あんな事になるのなら絶対に手放したりしなかった。男はずっと後悔の念に囚われていた。

「旦那様、今日のデザートを一目見るだけでも価値があると思いますが」
「…どの娘を連れてきても同じだ。私はしばらく女を抱く気は…」
執事がゆっくりと大きなふたを開く。吐き捨てるように言っていた男の目がそこに釘付けになった。
「…ご主人様」
皿の上にいたのは半年前に別れた小さな少女だったのだ。革の首輪をつけて…革のコルセットを身につけてその中に丸まっていた。

「…私は幻を見ているのか?」
男は席を立ち、少女に近づいていく。彼女はゆっくりと起きあがり、恥ずかしそうに皿の上で男を見つめる。男はおそるおそる少女の顔に手を近づける。少女は男の手を取って自分の頬にそっと添えた。ぴくりと男の指が震え、それが幻でない事を確かめるとそのままもう一方の手も反対の頬に触れる。

「お前は何者かに刺されたのではなかったのか?」
「はい…でも急所から外れていて…」

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