■幼姫無惨12(3)

「私が愛しい彼女を抱こうとすると泣いて逃げ回って…姫を大事に扱っていたのならいざ知らず、あんな…身体に傷までつけたあなたのどこがいいのか…私には理解出来ません」
「……」
「本当は姫様をあなたの所には連れて来たくはなかったのです。彼女は私の妻になるはずの愛しい女性なのです。あなたの元に連れていくと言う事はまたあなたの性処理のための女になりに行くと言う事ですからね。しかし、彼女は国よりも私よりもあなたの方がいいというのです。ですから私は姫様と賭をしたのです。あなたが姫様を大事に扱う意志があるだろうか。あるのでしたら私は何も言わずに姫様を置いて国に戻ります。もう姫様には用はないとおしゃるのでしたら私は姫様がどんなに泣き叫ぼうと連れ帰ります。そう約束してここに来たのです」
男は驚いて少女を見る。少女は男の服の袖を握って男を見つめていた。

「あなたは姫様を大切にする意志がありますか?」
「…ご主人様」
少女は心配そうに男の顔を見る。男は少女の頭を撫でて自分の元に抱き寄せた。
「大事に出来るかどうかわからんが…側には置きたいと思う」
「ご主人様!」
「…私もお前に会いたかったのだ。もう…この世にはいないものだと…だからずっと悔やんでいたのだ。お前を手放さなければ良かった…と」
彼女を抱く手に力をこめる。

「…では賭は私の負けですね」
クリスは首をすくめた。
「仕方ありません。潔く帰るとしましょう」

「…なんなら泊まっていけ。部屋ぐらいは用意するぞ」
「冗談じゃありませんよ。私は元とは言え愛しい許嫁が他の男と一つ屋根の下で仲良くしているのを我慢していられるほど人間は出来てはいないのですよ。まあ、たかだか一年会わなかっただけで他の男に向いてしまわれたのですから私にそれだけの魅力がなかったのでしょう」
「…そんな」
「それにこれでも忙しい身なのですよ。姫様が亡くなって宰相として姫様の代わりにいろいろとやる事だけはたまっていって…愚痴を言っても仕方がありませんね。とにかく私は急ぎ帰ります。馬車を急がせれば2,3日で国には戻れるはずですから」
青年は部屋から立ち去ろうとドアに向かう。

「クリス…」
青年を少女が止めた。
「…わがまま言ってごめんなさい。私…」
「…姫様。お幸せに…」

クリスが部屋を立ち去ると同時に執事も
「私はクリス様のお見送りをして参りますので」
と部屋から消えていった。

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