■村の鎮守の神様の(2)

きっと私をえさにするんだ。何とかしないと。

私は武器になりそうな物はないかと自分の周りを見渡した。しかし、明かりがない今、そいつ以外は真っ暗で何も見えない。手探りなんてしている時間もない。どうしたら……。

「ひっ……あっ……あっそ、そうだ!」
不意に手に持った壊れた懐中電灯の存在を思い出し、私はそいつめがけてそれを投げた。
すると、蔓が素早く動いてばしっ……という受け止めたような音がした後、床に金属が転がる音が続けて聞こえると血の気がすっと引いた。

まずい。あんな事したんだ。絶対に殺される!

「や……いや……やだ……やだよぉ……」

るぅるぅるぅるぅ……

そいつはゆっくりとだが確実に私に近づいてくる。私は尻餅をつきながらも掴まらないようにがくがくする足で後ずさった。

こんな所に来なければよかった。せめて誰かと一緒に来ていたら……。

こつんっ。
背中に冷たい石の感触がした。
「え?」
行き止まりまで追い詰められてもう逃げ場がなかった。

るぅるぅるぅるぅ……

「いや……いやだぁ……」
近づいてくるそいつから離れようと横にそれ、脇を抜けていこうとすると足首を蔦に掴まれて前のめりに転んでしまった。

「やっ……」
慌てて起きあがろうとする前に腕にもその蔓のようなものが絡みつき無理矢理に身体を起こされると、そのまま身体をその緑色の蠢くモノで覆い尽くされた。

るぅるぅるぅるぅ……

「やだ……助け……助けて……おかあさん……誰か……」
恐怖で頭がいっぱいになる。

食べられたくない。殺されたくない。

身体を動かして必死に逃げようともがそれはほとんど意味をなさずそれから離れるどころがどんどん私の身体に絡まってきた。
ところが。

“ああ…まゆりだ…本物のまゆりだ…”

え?

“会いたかった……やっと会えた……”

不意にあの私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

「だ…誰?誰かいるの?」

声の主を捜し、唯一自由になる首を巡らす。周りには誰もいない。何も気配を感じない。ただ、この気味の悪い生物と私がいるだけ。どうもこの声は頭の中に直接響いてきているらしい。

“君が来るのを待っていた。ずっと待っていたんだ……”

るぅるぅるぅるぅ……

「だ、誰?どこにいるの?助けてよ!」
洞窟の入り口に向かって声を上げた。

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