■村の鎮守の神様の(3)

“僕はここにいる……まゆりのすぐそばに……”

!

私のすぐそば……と言う事は今、私に絡んでいるこの変な生き物の声だったのだと気付き、目の前が真っ暗になった。

「ほ、本当にあなたがこの化け物だって言うの?」
ぴくんっと私を被っている触手が震えるとするすると私から離れていき、私は床にゆっくりと落とされた。

“化け物はひどいよ…僕はまゆりにひどい事をしたりはしないのに…”

るぅるぅるぅるぅ……

「あ……ごめ……ん」

私、懐中電灯投げちゃった。何も……されてなかったのに。

“でも……こんな姿ではそう思うのも無理はないね。まゆりとはあまりにも姿形が違いすぎる”

彼は寂しげに触手を揺らした。私はずきりと胸が痛んだ。

るぅるぅるぅるぅ……

殺されるって思ったけどそれは私の思いこみだったようだ。彼は話し方も態度も外見とはまるで違う。危害を加えられそうな気がしない。
先入観だけで彼を見ていた私は自分のやったことが恥ずかしくなり、きちんと話をするために、彼の前に座った。

「ごめんね。私、あなたにひどい事言っちゃった」
“いいよ。自分の事はわかってる。僕を見てどう思われるかもわかってる。僕も悪かったんだ。急に現れて抱きしめたりしたからまゆりが驚いてしまうのも仕方がない”

あ、あれ。抱きしめてたんだ。

“ごめんよ。ずっと頭の中で見ていたまゆりがここに来てくれたのがすごく嬉しくてまゆりがどう思うか分かっていたのに……”
「やっぱりあなただったの?私を呼んでたのは」
“うん。ずっと……。僕の呼ぶ声が聞こえてここに来てくれたらいいってずっと呼んでた”
「私、ここに来たの初めてだよ。何で?」

私を知っているの?

“僕もここからは出た事はないよ。でも、まゆりだけを見てたの”
「何で…?」

そう尋ねると彼は笑って自分には不思議な力があるのだと言う事を教えてくれた。
彼は物心ついた頃にはすでにここで一人でいたのだそうで、何故だかわからないけれど自分はここでは異形の生物である事も知っていたし、動かずに遠くの景色を見る事も遠くのモノに意志を伝える方法もわかってたのだそうだ。
言葉も外の人間の思考を読んで覚えたのだと言った。

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