■村の鎮守の神様の(4)

“僕は初めて小さなまゆりを見た時あまりの可愛らしさに目が釘付けになったんだ。気がついたらまゆりを目で追ってた。直接会って、まゆりを実際に見て、まゆりに触れて……まゆりを感じられたらどんなにいいかって思ったよ。僕は直接村に出られないからまゆりを呼んでいたんだ。まゆりの方が気づいてここに来てくれたらいいなって……”
彼は優しげに手に当たるのだろう蔓で私の頬に触れた。

るぅるぅるぅるぅ……

さっきまでの嫌悪感はすっかりと無くなり、彼に触れられるのはとても心地よく感じた。

「あなた。名前は?」
“名前?……るう”
「るう…?」

るぅるぅるぅるぅ……

先ほどから聞こえていた心地よい旋律が彼から聞こえる。
まるで子守歌を聴いているような、懐かしいようなそんな声だ。
それを聞いていると心が安らいでくる。

“これが僕が音として出せる声なんだ。だから僕が自分で付けたの”
「いい名前だね」
“……ありがとう”

“ねえ、まゆり?僕、さっきみたいにまゆりを抱きしめたい。してもいい……かな?”
「え?」
おずおずと彼が私に問いかけてきた。

“だめ?”
切なそうな声。胸がぎゅんと苦しくなった。

「……えと……。いい……よ……」
そう言った後、私はなぜだか恥ずかしくなってうつむいた。

するり……と蔦が動く。
さわさわと私の身体の輪郭を描くよう壊れ物を扱うように優しく撫でて行く。
大量の彼の手が私に伸びて全身を覆い尽くされた。

“……これがまゆり……これがまゆりの感触……”
「はぁ……あぁ……」

“気持ちいい……まゆりの膚……可愛い……まゆり……”
興奮したような様子の彼。

るぅるぅるぅるぅ……

彼は先ほどの旋律を奏で出す。
私は全身を抱きしめられる感触に身震いを起こした。

気持ちいい……。

暖かくてどきどきして自分の身体を包むモノが異形のモノだという意識もすでになくなって、
何だか離ればなれになっていた大切な人に抱かれているかのように感じさえする。
身体の中からぞくぞくする感覚が全身に広がってもっと包まれていたくなった。

“もっとまゆりが知りたい……もっと教えて……”
「あっ。う……ん……いいよ。もっと知って……」

ずるりと太い蔓が私の目の前に現れる。
それが私の口をめがけてゆっくりと近づいてきた。

るぅるぅるぅるぅ……

私は──
自然とそれに唇を触れさせていた。

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