■虫師の森(2)

「……あ、あの……私……神父様のお使いで来た……」
「ああ、知ってるよ。リアでしょう?こんな森の中にようこそ。待っていたんだよ。さ、中に入って」
「あ、あの……」

腕をとられ、せかされるように中に引っ張られた私はあわてて懐にいれた書簡を取り出した。
「こ、これ、神父様から」
「え?あ、ああ。ありがとう」
「私はこれを渡すように言われただけだから……その……」
「どうしたの?そんなに急いで帰らなくてもいいでしょう?」
「で、でも……あの……」

開かれたドアから中が見えた。虫だらけ……かと思いきやそこには薬瓶がたくさんおかれた棚とよくわからない実験道具のようなものが乗っている机が置かれているのが見えただけで虫の姿はどこにもなかった。

想像とは違いあっけにとられていると少年は私を見てくすりと笑う。

「……ひょっとして虫師の家だからって虫だらけだって思ってた?」
「あ……えっと……」

思っていたことをそのまま言い当てられて口ごもっていると彼はくすくす笑って中の扉を指さした。
「虫は奥の部屋にいるんだ。時々外の人も来るし、みんながみんな虫が平気な訳じゃないでしょ?だからここにはほとんど虫を入れないんだよ」
「あ……そう……なんですか」
「だから。安心して。外は寒かったでしょう?せめてお茶ぐらい飲んでいきなよ」
「じゃあ……その……お言葉に甘えて……」


「どうぞ」
彼に誘われて部屋の中に入ると隅の方から椅子を持ってきて座るように薦められた。

「あ、ありがとう」
私が椅子に座ると彼は神父様から預かった書簡を開き中を読んで満面の笑みを作る。

「ふふっ。やっぱりね。あの条件だったら絶対に飲んでくれると思ったんだ」
「……条件?」
「あ、うん。ちょっとした取引の返事なんだけどね。あーよかった」

子供のようにはしゃぐ彼を見ていると教会に時折現れるあの人物とはまるで別人のようだ。
本当に同じ人なのだろうか。

「ひょっとして僕が虫師だって疑ってる?」
「え?」

驚いた。どうして私の思ってることわかっちゃうんだろう。

「え?あ、ち、違うの。私、その……私と同じ位の年だなんて思ってなくて……」
「ははっ。確かにそうだね。ごめん。大抵の人は僕が虫師だって聞くと驚くからそう思ったのかな?って思ったんだ。実際にね、「こんな小僧が本当に虫師なのか?」ってよく言われるんだ。だから普段は顔を隠しているんだよ」

あ、それで。

←前|次→
目次|
inserted by FC2 system