■虫師の森(3)

「でも、腕は確かだよ。ずっとこの仕事に携わってるからね」
「へぇ……」

私と大して年が変わらないように見えるのにもう一人前なんだ。すごい。

素直に感心をしていると彼は部屋の隅に移動した。

「じゃ、持って行ってもらう薬の準備をするから。リアはそこにすわってお茶でも飲んでて」
ポットからお茶を注ぐと小さなテーブルの上に置いた。

「あ、でも……何か手伝い……」
「いーの。いーの。僕じゃないとわからないし。それに隣の部屋は虫だらけだよ」
「うっ」
虫はそれほど苦手じゃないけどたくさんいるのは見たくないかも。

「ははっ。じゃ、くつろいでて」
彼は扉を閉め、隣の部屋に行った。

◇ ・ ◇ ・ ◇

彼の入れてくれたお茶を飲みながら待っていたけれど彼はなかなか戻ってこない。

「ふぁ……」
部屋の中は暖かくて……。
それにここに来るまではずっと緊張していたから……。

知らぬ間に私は眠っていた。

◇ ・ ◇ ・ ◇

「リア。そろそろ起きないと帰りが遅くなっちゃうよ」
声をかけられて目が覚める。

「え?」
慌てて身体を起こすとそこはベッドの上だった。

「……私……?」
「渡す物を持ってきたら椅子の上で器用に寝てたからこっちに移動させたの。あんまり気持ちよさそうに寝てたから起こさなかったんだけどそろそろ戻らないと日が暮れるから声をかけたんだけど」
「あ、ありがとう……」

「でも、おこさない方がよかったかな」
「え?」
「どうせなら泊まってく?」

顔が近づく。綺麗な碧の目で見つめられて思わず胸がどきりとした。

「え?だ、だ、だ、だ、だめですよ。神父様が待ってますから」
「あははっ。そうだね。残念」

◇ ・ ◇ ・ ◇

彼は森を出るところまで送ってくれた。
西の空は綺麗なオレンジに染まっていた。

「今日渡せなかった薬は十日ほどすれば出来上がるって神父様に伝えてくれる?」
「あ、はい。お伝えします」
「その時、リアが取りに来てくれると嬉しいな」
「え?」
「じゃ、僕は行くね」
さわやかな笑顔をローブから覗かせて彼は去っていった。

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