■虫師の森(14)

「あ、気がついた?」

目を覚ますと彼はほっと息を吐き、目を細めた。
どうやら私は気を失っていたらしい。

「驚いたよ。森の様子を見回っていたら変なところで虫が群がっておかしいと思って見に行ったらそこにリアがいたんだから」
「あ、ありがとう。運んでくれたの?ごめんね」
「いいよ」
私はゆっくりと起き上がるとベッドの端に腰掛けた。

「それにしてもどうしたの?匂い袋を持ってこないなんて死にに来るようなものだって神父様から聞かなかった?」
「ごめん……なさい……私慌ててたから神父様からお借りするのを忘れてしまって」

「不注意だな。まあ、今のリアなら喰われることはないけど」
「今の私なら……?」
訳がわからずにいると彼は笑って顔を近づけた。

「今日はどうしたの?」
「あ、えっと……神父様の手紙を届けに……」
「ああ、手紙ってこれ?」
近くの机の上から白い封筒を手にとって私に見せる。

「リアを抱き上げたらそれが落ちていたから拾っておいたんだけど」
「うん。それ。神父様に届けて欲しいって言われて……」
「なあんだ。僕に会いに来たんじゃなかったのか」

残念そうに言って彼は封筒を開けた。そして、手紙を取り出すとそれを開き中を読み始める。

「あっ、でもね。えっと、薬……切れちゃったから……その……それも融通してもらいたくて……」
彼は「ん……薬……ね……」と読みながら返事をして、それをまた封筒に戻して机に放った。

「ごめん。あの薬だけどね」
「え?」
「もうリアには渡せないんだ」

目の前が真っ暗になった。

「そ、それじゃ……私……」

あのおかしくなる発作を薬が出来るまで我慢しなくちゃいけないの?そんなの……。

呆然としていると彼は笑みを浮かべて隣に座る。

「そんなにしょげないで。大丈夫だよ。リアにはもう必要ないから」
「どうして?私あれがないと困るのに……」

発作の治まっている今はいい。でも、このまま教会に戻ったら……。今までは何とかごまかせていたけれど神父様に知られてしまうのも時間の問題だ。

「平気だよ。だってリアは今日から僕のところに住むんだから。僕の前なら気にする必要も我慢する必要はないよ」
「何を言っているの?私、おつかいに来ただけで教会に戻らないといけないのよ」

「戻らなくてもいいんだって」
「どうして?私が戻らなければ神父様が心配なさるわ」
「大丈夫だって。だってリアは僕が買ったんだから」

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