■お姫様と…(2)

「誰に頼まれたというのですか?」
「いいえ違いますよ。これは私の意志でやったものです」
彼は穏やかな顔をして私を見つめる。

自らの意志?

「こうでもしないと数週間後にはメルフィスに嫁いでいってしまわれるでしょう?」
「婚礼はもう、1年も前から決まっていた事でしょう?どうして今更?」

「…私はずっと姫をお慕い申しておりました。しかし、私は姫とは身分が違います。ですから側にいられるだけで幸せでした」

そんな言葉、こんなところで聞いても嬉しくも何ともないわ

「そして、姫も私の事を気に入って頂いていると思っておりました…」
「ええ、私も、あなたの事を兄のように思っていました」

だから余計にあなたの裏切りが許せない。何でこんな所に私を?

「ですから婚礼の際には私も姫と一緒にメルフィスに連れて行って頂けると思っていました。しかし私を手放すのが惜しくなった王が姫の従者の人選の際、私を除いてしまったのです」
「…確かに父上はあなたの事をとても必要としていましたから…ですがそれは名誉な事ではないですか?」

「そんな名誉など私には必要ありません。姫と会えなくなるくらいなら死んだ方がマシですよ。…ですから、こうしてここに閉じこめさせて頂いた訳です」

淡々と…彼は話す。普段と変わらず、口調はひどく穏やかで、とてもこんな大それた事をした人とは思えなかった。

「父がきっとすぐに探し出してくれるわ。宮廷にはまだまだあなたより上級の魔導士はいるもの。その人達に探求の呪文できっと見つけさせるはずよ」

「…そうでしょうね」
「…そうでしょうねって…わかっていてこんな事をしたの?」
「ええ…わかっているつもりですよ。多分、瞬く間に見つけてしまうでしょうね。それに長けている方がいらっしゃったはずですから。ですが私も易々と姫様を取り返させる訳には参りません。ここはオファールの森の一番奥深い場所にある私の塔です姫を取り返しに来る者達への対策は万全です。怪物を各所に配置しておきました。騎士である、剣聖アルバートでもこの部屋にたどり着くには5日はかかるでしょう」

「私を取り返すならアルバートは必ず出てくるはずよ。たかが5日一緒にいるためにこんな事をするなんて愚かな事。今ならまだ私は父上には何も言いません。あなたをメルフィスに一緒に連れて行くことも父上にお願いしましょう。ですからこの戒めを外して私をお城に戻してください」

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