■お姫様と…(3)

「…すでに一日がたっておりますのでね。捜索は開始されているはずです。姫様が王に進言したとしても事が露見した後では無意味です」

「でも…」
「大丈夫、5日もあれば充分です。姫様がお城に戻りたくなくなるようにしてしまえばいいのです。最近、ちょっと面白い事を発見しましてね。姫様にそれを施してみようと思っているのですよ」
「…戻りたくなくなる…ってどういうことなの?」
「内緒です…」

彼はそう言って微笑みながら部屋から去っていった。

◇ ・ ◇ ・ ◇

お城に戻りたくなくなる…とはどういう事だろう。
何をされると言うのだろう。

石だらけの無骨な部屋に一人にされて私はひどく不安になった。

彼は…私の事を好いている。純潔を散らされてしまう事は間違いないだろう。けれど、それでお城に戻りたくなくなるとは考えられない。

「姫様…失礼いたします…」
一人の侍女がお辞儀をしながら中に入ってきた。侍女の制服に身を包み、手にお盆を持って。その上にはワイングラスが置かれており、中には赤い液体が注がれている。

「マリア、あなた無事だったの?」
オファールの森に同行した侍女で私のお気に入りだったマリア。その彼女が目の前にいる。
「はい…他に同行した者も皆、この塔におりますよ。ご安心下さい」
彼女はそう言ってにっこりと私に微笑みかける。

…そう、殺生はされてないのね。良かった。彼がそのような行為をするなんて考えたくなかった。それに彼女の様子だと他の者もひどい目には遭っていない様子。

「ご主人様から姫様にこれを飲まれるようにとの事です」
「…ご主人様?」
「そろそろ姫様の喉が渇いている頃でしょうからと言う事です。この近くの村で作られたワインです。どうそお召し上がり下さい」
そう言って私の前にお盆を差し出す。

血のように赤い…。
私はグラスを手に取るのに躊躇した。
「甘くて美味しいですよ。一度口を付けられてはいかがですか?」

彼女に言われ私は私はその血のように赤い液体の入ったグラスを手に取るとおそるおそる口に付ける。
「…美味しい」

そのワインは甘く、口当たりも良く、すんなりと喉の奥に入っていった。こんな美味しいものは飲んだ事がない。私はゆっくりとそれを飲み干した。

「…とても美味しかったわ」
「それは何より。ご主人様がお慶びになりますわ。欲しくなりましたら、私をお呼び下さい。また持って参ります。では…」
「マリア…」
私は彼女を呼び止めた。

←前|次→
目次|
inserted by FC2 system