■エッチな蝋燭(3)

萌ちゃんがキッチンに向かった後、ボクは窓を開けて匂いを外に追い出した。蝋燭に火はつけていないし、部屋に匂いがこもっているとは思わないけれど念のためだ。

間近で匂いをしばらく嗅いでいた萌ちゃんにはまだ効果が残っているらしい。食事の合間にもそわそわと落ち着かない様子でボクをちらちらと見てる。今の内に言っておかないとまずいかな。

「萌ちゃん」
「え?な、何?」
「ごめん。あのね。言い忘れていたんだけど。あの蝋燭。実は催淫効果のあるものだったんだ」
「催……淫!?」
「最初から萌ちゃんに頼む気ではいたんだけどね……」
「憲くんひどい。私それ聞いてない」

ああ、やっぱり言われると思ったんだ。ボクの作る薬は効果が突飛なものが多い。だから妙なことをするときには事前に言うのが萌ちゃんとの約束になっている。でも、これは事故なんだけどな。

「ごめん。本当は食事が終わってから頼むつもりだったんだよ。それに火を付けない状態でも効果があるなんて思わなくって……」
「…………」
「なんて言い訳しても仕方ないよね。言うのが遅れてごめん。でも、まだ協力して欲しいんだ。さっきの赤い蝋燭じゃなくて今度は白い蝋燭。こっちもレポートを頼まれているから」
「赤いのと一緒じゃないの?」
「少し違うんだ。匂いも……効果も……だから萌ちゃんの協力が必要なんだよ」

萌ちゃんは少しだけ考え込んでいたけれどすぐに顔を上げた。

「……わかった。協力する。それと、私もごめんなさい。何に使うのか私もきちんと聞かなかったのに憲くんを責めちゃって……」
「それは気にしなくてもいいよ。ボクが言い忘れたのがいけなかったんだから。でも協力してくれるのは嬉しいな」


食事が終わり、食器を流しに置いて洗い上げを萌ちゃんに頼むと蝋燭の入った箱を持って二階に上がった。さっきはほとんど読めなかったから先に取り扱い説明書を読んでおくためだったんだけど説明書はチャットで聞いた内容と大して変わらずボクは溜息をつくと取説の紙を箱にしまった。


「憲くん?」
そっとドアが開く。開いた隙間から萌ちゃんが顔を覗かせた。

「あ、萌ちゃん」
「……入って……いい?」
「どうぞ」

萌ちゃんをベッドに座らせるとボクは早速机の上の段ボールから白い蝋燭を取りだした。赤い蝋燭には薔薇の柄が描かれていたけれどこちらは百合の柄。

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