■ゆきずりなふたり(3)

「…凶悪な盗賊かぁ…大丈夫かなぁ」
「ん…この辺を根城にしている奴ら程度ならオレ達だけでなんとかなると思うけどな…」

…どっからそんな情報まで手に入れてるのよ。

「どうする?」
私はシェルと顔を見合わせた。
「別に急ぎの用もないし、いいんじゃないの?」
彼はこともなげに言った。

…まあ彼がそう言うのなら大丈夫なのだろう。

「じゃあ…やらせてもらうけど…」
「助かります。申し訳有りませんが時間がありませんので早速お願いします。盗賊に襲われた場所はこの者が案内します」
と隣の店員を二人に紹介した。

「盗賊は倒しても倒さなくてもどちらでもかまいません。商品さえ戻ってくればいいのです。ですが盗賊の頭を運良く捕まえたら役人に引き渡せば懸賞金が出るはずですよ」
店主はそう言いながら前金を渡した。

「では、よろしく頼みます。くれぐれも香水瓶を開けないようにお願いしますよ…」

◇ ・ ◇ ・ ◇


盗賊のアジトは襲われた場所から程なく見つかった。案内人は私達にそこにある荷馬車が店のものであるのを間違いない事を伝えて「案内はしましたので…」と巻き込まれたくないらしくそそくさと去っていった。

「さて…と」
見張りの2人を縛り上げるとそこら辺に転がしておく。

「ディー どうする?」
シェルが私に向かって言う。

「とりあえず中の様子を窺ってますか」
私は慎重にドアに近づいていき聞き耳を立ててみる。普通、話し声とかが聞こえてきそうなモノなんだけど。

「?」
「どうした?」
私の顔を見てシェルが尋ねた。

「何か…いびきと…泣き声っていうかわめき声みたいなのが聞こえるんだけど…捕らえられてる人っているって聞いたっけ?」
「いや…聞いていないが…」
「…とりあえず。スリープ一発かけてみますか」

私はそっとドアを少しだけ開ける。部屋から甘い匂いが流れてくる。

「…この匂い…!」
シェルは呪文の詠唱を始めた私の手を力一杯引っ張りドアから離す。

「ディー!急いでこっち来い!」
「? え?」

シェルは大急ぎで私を建物から離れた場所に連れて行く。

「ちょっと!シェル!せっかく気づかれずに眠らそうと思ったのにあんな事してどうするのよ!」
私はせっかくのチャンスを彼に邪魔をされて怒った。けど彼はそんな私にはお構いなしで心配そうに私の様子を見ている。


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