■ゆきずりなふたり(4)

「それよりもあの匂い思いっきり嗅いでないだろうな?」
「? …匂い? 香水の事? …そいえば少し甘い匂いがした気が…」
「じゃ…じゃあ、体とかどこかおかしかないか? 熱いとかぼぉっとするとか」
「…何? 何なの? どういう事よ?」

「…何ともないようだな…よかった…」
シェルは緊張が解けたようにほっと一息安心してため息をついた。

「ありゃ催淫剤の匂いだ」
「催淫剤!?」
私はすっとんきょうな声を上げた。

「匂いでその気にさせるってやつだ。オレも前にあれでえらい目にあった事があるから多分そうだと思う」
えらい目ってどんな目だろう。そっちの方が気にかかる。

「…そういやお祭りには国の姫さんがお忍びで来るんでここの領主が手に入れたがっているって話をどっかで聞いたな…それで中を開けるなって事か…」
腕組みをしてぶつぶつ独り言をいいながら一人でシェルは納得をしている。

「で、あそこまで匂いがするってことは中身を確認しようとして開けた奴がいたみたいだな…とすると…」
「中でのうめき声とか泣き声って…」
「………考えたくないが…」
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ…やだぁ…」
頭を抱えてしゃがみ込む。

中で、んなえぐい事が…。

「…ま、ともかく、だ。そのおかげと言っては何だがすでにそんなだから…仕事は楽なはずだし…」
「…見たくないなぁ…」
「オレだって……」
しばし沈黙。

シェルは思い出したようにこちらに向き直ると
「…ところであの匂いを嗅がないですむ魔法って何かある?」
「ん…水の中で息をする魔法でいけるんじゃないかな…
あれは確か口の周りに空気の層を作るから…」
「じゃ、それ頼む」

私は呪文を詠唱する。二人の周りに空気の層が出来る。
「大体30分ぐらいかな。とりあえず急いでやっちゃいましょ」

「念のためスリープかけとくね」
扉の中の声が寝息に変わったのを確認して中に入った。

扉の奥は…とってもやばい事になっていた。盗賊らしいむさい男達が主に下半身をさらして眠っている。周りには《いたした》らしい体液がそこら中にまき散らされ異臭を放っていた。薬の匂いの方が勝っていたようだがどちらにせよ私達は魔法が効いているためその被害には遭わないのが不幸中の幸いなのかもしれない…

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