■すまにーとばーわ(4)

「うぎゃぁぁぁ」
どこに消えたのかと思っていたらいきなり背後から悲鳴が聞こえる。それと同時に肉の焦げる匂いが背後から漂い始めた。後ろ手に掴んでた手が外れ、ナイフを持った手と共に床に落ちる。慌てて振り向くと手だけを切り離された男が元に戻ったお兄ちゃんの足下で呻いていた。

◇ ・ ◇ ・ ◇

兄ちゃんは魔術師ではあるけれどスライムでもある。一年ほど前、仕事仲間の裏切りでこんな身体になってしまったのだ。

それでもお兄ちゃんはすごかった。通常スライムに溶かされた人間は、スライムと意識を共有されて個人という考えはなくなってしまうそうなんだけど、お兄ちゃんは自分の意識を共有されなかったどころかそれすら取り込んでしまい、スライムの身体の主導権も自分で握って元の身体に形作ることまで出来るようにしてしまったのだから。

それでも身体を理性でコントロールしているためかさっきみたいに同化もとい、食事をしている時なんかは頭がスライム並になって、食べ終わるまでそれしか考えなくなってる事もあるんだけど。

魔法もそんな理由で集中力を伴うような大きな魔法は使えない。唱えた途端に理性が本能を押さえきれなくなって側にいる関係のない人たちまで手を出しちゃうからだ。私も別の意味で大変な目に遭ったことがあるからそれ以来、無茶な魔法は使わないようにお願いしてる。

と言うわけで以前よりも魔術師の腕は落ちてしまったし、お兄ちゃんの暴走に巻き込む可能性があるから他の人間をメンバーに入れることも出来ない。それでもこうやって危なげなく旅を続けられるのはお兄ちゃんが今まで培った経験を元に今使える魔法を効果的に使ってるからで、それでもどうしようもない時には最終手段としてこれ”同化”のお世話になってたりするのだけれど。
でも、今回あっさりとこれを使ったのは理由がある。
実のところスライムとしてのお兄ちゃんは人間が好物なのだ。

「ったく。何がリズを可愛がるだ。リズに手え出していいのはオレだけなんだよ」
お兄ちゃんが男の足に手だけをアレにした状態でぺたりと触れた。

「ぐあっ!」
じゅうっ。という音がして嫌な匂いと煙が立ち上る。触れた部分がお兄ちゃんに同化される。男は短くなった手をばたばたさせた。

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