■すまにーとばーわ(7)

気がつけば周りは薄暗くなってきていた。
お兄ちゃんはランタンをつけようとする私の手を止めて「山道ならこっちの方がいいだろう」と手にした杖に魔法の灯りの呪文をかける。杖の先に柔らかな灯りが生まれ、私たちのほんの少し先を照らした。

「お兄ちゃん、本当に食べに行くんじゃないんだよね?」
「でぶでぶのお兄ちゃんは嫌なんだろ?」
大きな体をゆさゆさと揺らしながらお兄ちゃんは言う。

「うん。それ以上は大きくなって欲しくないなぁ」
今だって普段より一回り大きいんだもの。

「リズに嫌われたくないし我慢するか……ん?」
お兄ちゃんは首の後ろに手をやってため息混じりに伸びをしたまま動きを止める。

「どうしたの?」
『シッ……』

どこからか悲鳴が聞こえた。すぐ近くではないけれどそれほど遠くない。

『あれだな』
声のする方向に目をやるとこちらに向かって来るいくつかのたいまつの明かりが見える。

『リズ、こっちだ』
お兄ちゃんはすぐさま魔法の灯りを消すと大きな木の陰に私と共に隠れた。若い男女が側を通る。そのしばらく後ろをたいまつを持った複数の人影が追っているようだ。

『……!』
後ろから何かが飛んで、それに足を絡ませた女が地面に転がった。男が慌てて彼女の手を掴んで助け起こすとその間にむさい男どもが追いついていた。

『お兄ちゃん……あれ……』
『ああ、さっきのやつらだ。オレたちから逃げた後見つけたんだな』

男は女を先にやると、時間稼ぎをするために男たちに向かった。女は後ろを気にしながらも男に言われてふらつく足取りでかけて行く。男は懸命に男たちを引き留めるけれど多勢に無勢、すぐに地面に転がされた。

『助けなきゃ』
『どうして?』
『どうしてって……』
『オレたちとは関係のないやつらだぞ』

男たちは女を捕らえようとかけだして行く。男が気になったのであろう女はあまり遠くないところで男たちに捕まった。女の悲鳴が上がる。

『見過ごせっていうの?』
『そのつもりだが?』
『お兄ちゃんの薄情者!』
『リズだって早く休みたいって行ってたじゃないか。助けになんか行ったら当分休めないぞ』
『そう言う問題じゃないでしょ!』
立ち上がり、助けに行こうと腰のショートソードに手をかける。

『馬鹿!何するんだ!』
後ろから襟首を捕まれて強引に座らされた。

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