■すまにーとばーわ(8)

『助けに行くの!』
『リズが行ったって逆に捕まるだけだぞ。剣もまともに振るえないくせに巻き込まれにいくんじゃねえ!』
『でも、目の前で襲われているんだよ?何もしないなんて出来ないじゃない。お兄ちゃんがしないって言うから私が……』
『待てって』
立ち上がろうとするところをまたお兄ちゃんに座らされた。

『仕方ねーな。助けりゃいいんだろう?まったく、リズは……』
お兄ちゃんは呆れたように息を吐いた。

『助けてくれるの?』
『しようがねーだろ。じゃなきゃリズがあいつらに犯されに行くって言うんだから』

そんなこと言ってないって。

『さてと……どうするか』
お兄ちゃんはたるそうに頭をかきながらぽつりと一言。

『手っ取り早く片付けるなら食うのが一番なんだがなぁ』

はい?

『あれだけ食べたのにまだ食べたいの?ってこれ以上食べたらだめ!』
『ちっ』
『ちっ、じゃないでしょ!』

もう、さっきまで私に嫌われたくないって言ってたのに。助ける気になってくれたのはいいけどどうしてすぐにそっちになるの?

『そんな事したらあの二人にお兄ちゃんの正体を見られちゃうじゃない!』
『けどさ。久しぶりに食える人間が目の前にたくさんいるってのを見逃すのはなぁ』
物騒な事を言う彼に私は冷ややかな視線を投げかけた。

誤解をしないで欲しい。いくら人間が好物だからと言ってお兄ちゃんはむやみやたらと人を食べているのではない。あくまでも自分の基準で悪人と思った人間だけを食しているのだ。

そういう連中っているところにはいるけれどそうしょっちゅう会う訳じゃない。だからこそお兄ちゃんとしては食べられる時には食べておきたいと思うのだろうけど、いい加減、人間らしい考え方に戻って欲しい。

『お兄ちゃん。今、自分が魔術師だって忘れてるでしょう?』
『ああっ』
お兄ちゃんはぽんと手を打つ仕草をした。

『そう言えばそうだな。どうも悪党=(イコール)食えるって事しか頭になくてなぁ』

のんきにそんなことを言うけどそれ絶対おかしいから。

『そんな事ばっかり考えていたらそのうち本当に頭までスライムになっちゃうよ?』
『冗談だ。食わずに何とかすればいいんだろうが。その代わり……』
にんまりと笑みを浮かべ、お兄ちゃんは私を見た。

「後で覚悟しておけよ」
お兄ちゃんは詠唱を始めた。

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