■すまにーとばーわ(10)

「だ、だって、あれだけ食べたら、お兄ちゃん大きくなりすぎてしばらく街に立ち寄れないじゃない!」
「それはそうだけどな……おっ、ここか」
「……ここ?」
お兄ちゃんが指し示したのは洞窟だった。

「ひょっとして……あの山賊のアジト?」
「正解。ちょっと待ってろ」
お兄ちゃんは目をつぶると呪文の詠唱を始める。

どうやら魔法の目を飛ばして洞窟の中を探っているらしい。「案外広いな……」とか「お、なかなか良い物があるじゃないか」などと呟きながら中の様子を調べてるようで、しばらくするとお兄ちゃんが目を開けつまらなそうにため息をついた。

「誰も残ってないな」
「そうなんだ」
「不用心だな。戦利品を置いておくなら見張りぐらい立てておくもんだぞ。そしたら一人ぐらい食えたのに」

まだ食べる気だったの?

「お兄ちゃん?」
「冗談だ。中の様子はわかったから。リズ、行くぞ」
「あ、待って……」
お兄ちゃんは洞窟の中に入って行った。

◇ ・ ◇ ・ ◇

中に入るとすぐに開けた場所に出る。飲み食いをしていたのだろう、そこには敷物が敷かれた上に酒樽や食べ散らかしが散乱していた。
足元に注意しながら中を進むと、奥に向かう通路があって先で二股に分かれているのが見える。お兄ちゃんは迷いもなく左側を選び先に進み、すぐに先ほどよりも少し小さな場所に出た。
そこも何枚か敷物が敷かれていたけれど、さっきの部屋と違い食べ散らかしはなくて毛布などが散らばっていた。どうやら山賊たちの寝床として使われている場所らしい。

「ま、あんま綺麗とは言えないが。野宿するよりゃましだな」
お兄ちゃんはそう言って笑みを浮かべた。

「え?野宿するよりましって……」
「ここに泊まる」
「何で?」
「こういう事するにゃ丁度良いだろう?」
そう言うとお兄ちゃんはおもむろに私を抱き寄せる。

「あ……?」
首筋に口づけをされた途端据えた匂いが鼻をつきひくんと身体が震えた。それで改めてお兄ちゃんの言葉の意味に気づかされる。

覚悟って……そう言うことなの?

他の種類は知らないけれどお兄ちゃんと同化したのは人間の女性と性交をして繁殖するタイプのスライムだったのだそうだ。同化して身体が大きくなることはあるけれど、それはあくまで食事と同じだから、その分を消化してしまえばまた元の大きさに戻るのだとか。

←前|次→
目次|
inserted by FC2 system