■犬が欲しい(3)

「ちょうどいい。まゆさんが見えたようですから見ていただきましょう。まゆさん。あなたが欲しがっていた犬を持ってきたんですよ」
「え?犬?」
「ええ。こちらに……」

男が指し示したところにはもちろんあの『犬』……だ。

「これ犬じゃないよ。おじさんの嘘つき」
まゆは男をにらみつけ頬をふくらませた。

当たり前だ。どう見たってこれは犬とはいえないのだから。

「嘘はついてませんよ。これはとても素晴らしい血統書つきの犬なんです」
「血統書?」
「ええ、珍しい品種で世界にも一匹しか存在しないのです。だからまゆさんが望んでいた犬とは少し違うかも知れませんがそれは珍しいからなんですよ」

そんな説明でまゆが信用するか!

「へぇ……そうなんだぁ」

まゆ。そこであっさり信用するのか?

「お散歩出来る?」
「すいません。座敷犬なので室内でしか飼えない品種なんです」
「そうかぁ」
「でも、水遊びは大好きなのでお風呂には一緒に入ることが出来ますよ」
「わぁい♪」
男の言葉を信じ、まゆは目を輝かせた。

「おじさん。このわんちゃん。なでなでしても大丈夫?」
「ええ、飼い主には絶対に危害を加えませんし、撫でられるのは大好きですから」
「わんちゃん、なでなで〜」
まゆは無邪気に『犬』の頭を撫でる。
犬は首をすくめ、気持ちよさそうに撫でられている。
そのうち一声ほえるとまゆの手を舐め始めた。

「きゃはは……くすぐったい。くすぐったいって」
戯れる二人というか一匹とひとりというか……。

「ね?彼女も喜んでくれたでしょう?」
「……わかった。飼うことにするよ」

「では、ここにサインか判子を」
サインをすると男たちはかき消すようにいなくなった。


妙な者を飼うことになってしまったが、まゆが気に入ったのだから仕方ない。まゆには学校の友達を家に連れてくるなと言わないとな。

「嬉しいなぁ。珍しい血統書付きの犬なんてすごいよね。明日みんなに見せびらかしちゃおう」
「止めなさい!」

←前
目次|
inserted by FC2 system