■素敵な仕事場4(3)

『由真を大層気に入って利子分の返済だけでも減らせるように気を使って先払いで給金を送って下さったんだそうだね。有り難い事だ。だから早速返済にあてさせてもらったよ。本当に助かった。私が働くだけでは利子分でほとんど消えてしまってどうしようか途方に暮れていたんだよ』
「あ…」
『お前にばかり負担をかけさせてはいけないと、いろいろ仕事を掛け持ちしたりしているんだが、お前が送ってきた金額には到底及ばないよ。こんな事を言っては父親失格かもしれんがお前も頑張ってくれ。早くお前と一緒に住めるようにお父さんも頑張るからね』
「あ、うん…」

携帯を切った。

父が働いただけでは利子で消える───
そんな状態で転職をし、風俗ではないまっとうな職に就ついたとして、返済など一生かかっても出来ないのではないだろうか。風俗か…ここか…どちらが自分にとってましなのか。
頭の中で考えを巡らす。

「………」
しばらく考えてここの方がまだましと結論を出した。

彼女は腹をくくった。自分はここで働くしかないのだ…と。


「お父さんの様子はいかがでした?」
「喜んでました。大金を振り込んで頂いたのでさっそく借金返済に使ったって…」
「おやおや。それは困りましたね。使ってしまったのでしたら…」
「わかってます。私、ここで働きます。転職をしてもお金を返せるかどうかわからないし…」
返済をしたらすぐにここを辞めれば良いだけなのだ。それまでの辛抱なのだと自分に言い聞かせる。

「それが賢明だと思いますよ。彼はあなたにとても懐いてきているんです。あなたがいなくなったら寂しがるでしょうし…」
気が付きもしなかった…。自分はこれから逃れたいとしか考えていなかったから。

「…」
ふと近くの触手に触れる。それはもぞもぞと動きながら彼女の手に絡みつく。自分に懐いているのだと聞いて気味が悪いと思っていた事が恥ずかしくなる。

「気に入らないと近寄りもしませんからね。あれからどうですか?嫌な事はされましたか?」
「………」
言われてみれば繋がってからはずっと自分を暖かく包み込んでいるだけだった。確かにまさぐられ続けてはいた。でも彼が怪物だからという先入観で見ていただけだ。実際にはそれ以上ひどい事はされていない。

「まあ、この仕事を続けて下さると言って下さってほっとしました。彼は今まで来た人にはなかなか懐きませんでしてね。ここまで懐いているのはあなたが初めてだったんですよ」

私が…初めて…

そう思うと少しだけ可愛く思えてくるから不思議なものだ。彼女は触手に手を触れてそれを撫でた。

「では、引き続きお願いしますね」

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