■素敵な仕事場9(1)

数ヶ月後…
モニターを見ていた森島は、由真の様子がおかしい事に気づき慌てて部屋に飛び込んだ。

「何で?…何で?…そんな事を言ってるんじゃないの…ねえ何で?」
彼女は触手を両手で持って必死に揺さぶって何かを問いかける。森島が中に入ったのも気が付かないようだ。

「ねえ、お願い。どうしてなのか言ってよ!!」
殴りかかろうとする由真を森島が止める。

「由真さん!何をなさってるんですか!」
「オーナー…」
そこには涙をおろぽろと流している由真の姿があった。

「どうしたんですか?温厚なあなたがそんなに取り乱すなんて…」
「彼が…彼が触ってくれないの…」
「触ってくれない?」
森島は由真を見た。彼女の身体は触手に被われて触れてくれないという彼女のセリフとは明らかに違う。

「…どこの事をおっしゃっているのです?あなたはそんなにも彼に愛されているではないですか?」
「だって…だって…昨日から…私の…大事な処に…入れてくれないの。昨日目が覚めた時からずっとなの。今までそんな事一度もなかったけど…それでも…そういう気分なのかな?って寂しかったけど我慢してたの。でも…今日になっても全然入れてくれようとしないの…子種を注いでくれないの。ずっとお願いしてるのに…だから彼にずっと聞いているの。でも彼は『私が大事だから』って言うの。私が大事ならしてくれるはずでしょ?だってそれが彼にとって私への愛情表現なんだもの。ねえ、オーナー?彼は私に飽きてしまったの?」

由真にそう聞かれ森島は返事に戸惑ってしまった。

今まで仲むつまじくずっと繁殖行動を毎日欠かさずしていた二人だ。他のカップルにも今までそんな事は起こった事がない。だいたい、何かの事情で離れなければならない限り相手を変える事がないと言うのがこの生物の習性のはずだったはずだ。

「…私にもわかりません。こんな事は初めてです」
「わぁあああああ…そんな…そんなぁー」
森島が呆然とそう答えると彼女は泣き崩れた。
そんな彼女を見て触手は労るように彼女を優しくなで上げる。

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