■素敵な仕事場10(4)

『………』
しばらくの沈黙。

『…わかった。だが無茶をさせるなよ』
「大丈夫ですよ。私だってそんな事になったら困ります。あなたにとっても私にとっても金のなる木には変わりませんからね。では、そろそろ切りますよ。二人の様子をお伝えしたかっただけですのではい…ごきげんよう…」

電話を切ると森島は椅子から立ち上がる。

「さて…もう少ししたらまた乳女の募集をしないといけませんね」

◇ ・ ◇ ・ ◇

それから数ヶ月経ったとある街角。

店の前に置かれていた無料の就職情報誌を読んでいた女の子が声を上げた。
「わぁ…月給***万円だって」

そばにいるもう一人の女の子がその雑誌を覗き込む。
「どれどれ?わぁ…すご…けどこれ怪しくない?」
「休みが取りにくいのかもしれないよ。ほら、ここに書いてある。『生き物相手なので休みはあまりとれませんがその分給料でカバーをいたします』って」
彼女は指で指し示す。

「お金たくさん稼げても遊べないんじゃなぁ」
「農場だしねぇ。仕事きつそう」
「しかも住み込みだって24時間こき使われそう」
「一ヶ月だけ我慢してお金もらったら即辞めるってのは?」
「そんなに働けるかって感じだなぁ」
「もっと楽して儲かるのがいいって…あ、時間だ。行かなきゃ」
「ああん。待ってよぉ」
彼女たちは慌ててその小冊子を元のところに戻し、店を出ていった。

「……」
その様子を見ていた別の少女が彼女たちが去った後それを手にとった。ぺらぺらと紙をめくり、意中のページを見つけたのか食い入るようにそれを見る。

「『月給***万円』…『200万から500万にもなる可能性』」
少しやつれた様子のその少女は何度も何度もそこに書いてある文句を読み直す。

「…ここなら…きっと…風俗じゃないから私でも働けそう。それに農場だって書いてあるし。仕事きついかも知れないけどお父さんの借金を返すにはこれぐらいもらわないと…。でも、こんなにお給料がいいからもう…」

彼女は何かを振り払うように首を振る。
「ううん。駄目で元々だもん」
そう呟いて携帯を取りだし祈りながらその番号を押した。

←前
目次|
inserted by FC2 system