■増幅師(1)

「何ぃ〜増幅師だとぉ〜?」
「…はい」
オレが呆れた声を上げると彼女は申し訳なさそうにオレを見ながら頷いた。

…魔術師ギルドの奴ら、オレが若いからって増幅師なんかよこしやがって…騙したな。

「…すいません。なんか今日はみんな出払っていて魔術師って呼べるのは私しかいなかったんですよ」
「むむむ…」

…確かに…増幅師も一応魔術師の中に入るからな。

「お前…少しは他の魔法も使えるんだろうな」
彼女はオレを上目使いで見てひどく申し訳なさそうに言った。

「…あまり期待しないでください…」

どわぁぁぁぁぁ…

…オレはどうやらギルドのお荷物を押しつけられたらしい。

◇ ・ ◇ ・ ◇

オレはニル。まだ若いが剣の腕はいいと自負している魔法剣士だ。で、彼女はシンシアと言って魔術師ギルドで紹介をされた増幅師。このくそ暑いのにゆったりとしたローブを着て頭からフードを深々とかぶってるからほとんど年も表情もわからねえ。声の感じからすると若く感じる…それぐらいだ。

増幅師ってのは名前の通り魔法の威力を増幅してくれる魔術師で彼女はそれのエキスパートなんだそうだ…がオレは魔術師が必要なんであって増幅師は雇うつもりはなかった。特に増幅しか出来ないヤツはなおさらだ。こんなレアな魔術師がこの町にいたって言う事自体が驚きだ。

「あ…でもニルさんは“魔法"剣士なのでしょう?でしたら私でも十分お役に立てると思いますけど?」
「…シンシア…いいか?笑うなよ。これがオレの使える最大級の魔法だ」
オレは呪文を詠唱する。
指先にぽんっと可愛い炎が灯る。

「……」
「他にはどんな呪文を使う事が出来るんですか?」
「これだけだ…」
「これだけ…このごくごく小さな種火のような炎が最大級で唯一の魔法なんですか?」
「…そう言う事だ。気のせいか言い方に棘がないか?」

「気のせいですよ。しかし、どうしてこれしか魔法が使えないのに魔法剣士を名乗ってらっしゃるんですか?」
「この程度とは言え魔法は魔法だ。ただの剣士より魔法剣士の方がかっこいいじゃないか」
「…そう言う理由なんですか」
「そうだ」
彼女はやれやれと言った動作をすると呪文を詠唱した。

ゴ…ゴゴゴゴゴ…

オレの指先の炎は彼女の呪文と共に天を焦がすような勢いで伸びた。
「…すげぇ」
「…他にもこの炎を媒体にして火の玉を作りだし相手にぶつける位は出来ますよ。他の魔法が使えなくても少しは私もお役に立てるのではないですか?」
「…う…ん」

オレは彼女を連れて行く事に決めた。急ぎの仕事であるし、この町の魔術師ギルドでは実際他に雇える魔術師がいなかったから。そして彼女でも連れて行けば何かしら役に立つだろう…と。

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