■増幅師(4)

ゴーレムから少し距離が離れた辺りで彼女の足がもつれて蹴躓いた。
「…はぁ…はぁ…本当に…あなたは何を考えてらっしゃるんですか…魔術師を…こんなに走らせて…私…あまり運動した事ないんですよ」
肩で思い切り息をしながら彼女はゆっくり起きあがるとその場に座り込んだ。

「仕方ないじゃないか。まさか魔術師がギルドにいないなんて思わなかったんだからそれにお前だって出発をしてから増幅師だとオレに言ったんだぞ」
「…私もです。あなたがきちんと魔法が使える方だと思ったから言わなくても大丈夫だと…」
彼女がオレの背後を見て言葉がとぎれた。おそるおそる後ろを振り返るとすでにゴーレムが近くに来ている。

「おい、行くぞ。立てるか?」
「立つ事は出来ますけど…足がふらふらで…」
「しょうがねえな」
オレは彼女を担ぎ上げた。

「きゃっ…」
思ったよりかなり軽くて華奢だ。これならしばらく走れそうだ。


ゼイ…ゼイ…
畜生…何でゴーレムってやつは疲れを知らないんだよ?いい加減、魔法が切れてくれれば助かるのにずっとこのままなのか?こっちは…かなり…走りづめ走って…へとへとだ。

オレはゴーレムから離れたのを確認すると近くの木が開けた小さな広場のような所で彼女を地面に下ろして座り込んだ。ここならゴーレムの姿が見えてもすぐに逃げれば大丈夫だろう。

「…大丈夫ですか?」
彼女がオレを覗き込む。
「…だ…い…しょ…ぶ…だ…走りすぎて…ちょっと休憩しているだけだ」

しかし、そろそろ限界に近づいている。あれを何とか出来ればいいんだが…。

ガサ…
メリ…メリメリ…

木々の倒される音。ズシンズシンと重いものが歩く音と地響きがもうすぐ近くに来ている。

…まずいな。疲れが回復していない。こりゃ…無理だな…。

「シンシア…走れるか?」
「ええ…少しは…」
「よかった…ならオレを置いてここから逃げろ。それから…金を渡すから近くの町にいそいで行ってこいつを何とか出来る人間を連れてきてくれ」
「ニルさんはどうされるんですか?」
「もう少し山の中にこいつを誘導する。…と言ってもどのぐらい行けるかわからんけどな。走りすぎてそろそろ体力も限界だ」

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