■増幅師(5)

「ご自分を犠牲にされるんですか?」
「仕方ないだろう?オレを追ってきてるんだから。ほら、これをやる。さっさと町に行ってくれ」
オレは腰にある依頼料の入った袋を彼女に渡す。

「これを持って逃げるかもしれませんよ」
「そんな事をしたらここら一帯は全滅だろうな…しかし、お前はそんな事しないだろう?」
オレは彼女に金を渡すとふらふらする足で立ち上がった。

「……」
彼女は動こうとせずにローブの奥からオレを見ている。
「…ほら…さっさと行け」
オレは彼女の背中を押す。

「私も…町までは行ける程は回復してません」
「…それでもいいから行け!巻き込まれるぞ」
「あなたをここに置き去りのまま行ける訳ないじゃないですか。まがりなりにも雇い主なんですから」
「雇い主が行けって言ってんだよ!」
「いいえ…私がここで何とかします。…町に行っても腕の立つ人がいらっしゃらなかったらどうしようもないじゃないですか被害を大きくするよりここでくい止めた方が良さそうです」

「くい止めるって…お前増幅しか出来ないんだろうが!」
「期待しないで欲しいと言っただけです。増幅魔法以外を使うとちょっと困った事になるので使わないようにしていたのですけど…こうなってしまったら使わないと私も後悔しそうですからね…」
そう言いながら彼女はフードを頭から外してちらりとオレの顔を見た。

若い。…それに可愛いじゃないか。何でフードなんかで顔を隠してるんだ。勿体ない。

「後の事は…責任取って下さいね」

責任?
何をだ?

バキッ…
ヤツがすぐ近くまで来た。

彼女は呪文を二言三言詠唱する。空が思いっきり暗くなって天からゴーレムめがけて隕石が落ちてきた。

…これは確かメテオ・スウォームとか言う。かなり高度な魔法なんじゃなかろうか…いくら高度な魔法が使えないオレとは言えそれぐらいの事は知っている。

オレはゴーレムが隕石に埋もれていくのをあっけにとられながら見ていた──

隕石に埋もれながらもまだそいつは動きを止めず、必死にそこから動こうとしている。彼女はそれを見ると今度は集中豪雨を降らせた。ゴーレムの周りの隕石から水蒸気があがり、ここら一帯は熱気を帯びた湿気で包まれた。今度はその湿気を振り払うように風を起こす。途端湿気が嘘のように晴れる。

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