■増幅師2(2)

「よろしくお願いします」
シンシアが連れてきたのは気の弱そうなまだ冒険者になったばかりの少年だった。名前はテッド。今回が最初の仕事になる魔術師なんだそうだ。

「おい。本当にこいつ役に立つんだろうな」
オレは小声でシンシアに問う。
「大丈夫ですよ。私の目利きに間違いないです」
シンシアはにっこりと自信たっぷりに微笑む。

オレは後ろについて歩く少年を見た。

何だか頼りなさそうだが本当に役に立つのか? …何か秘めた力でも持っているのだろうか。オレにはどう見てもお荷物にしかならないように見えるんだがな…。

「おい。テッド」
「はい…」
「お前魔術師だろう?何の魔法が得意なんだ?」
「ボクは…水の魔法を少し使える事が出来るだけで後は…」

炎のスライムなんだから水は有効なはずだな。…て事はオレは今回出番なしって事か…。それはそれで複雑なんだが…。


洞窟の中を降りていくとすぐ近くにまでスライムがやって来ていた。

「依頼人が言っていたよりもかなりでかくなってやがる」

どっかに油の貯蔵庫でもあったのか?

「まずいですねぇ…このまま洞窟から出られたら山火事になってしまいますよ」

オレはテッドの方を向く。
「テッド。水を出せヤツにかけるんだ」
「あ…はい」

彼が呪文を詠唱すると指先から糸のような可愛らしい水がぴょろろろろろろ…っとスライムに向かって飛んでいき、ヤツの表面でじゅう…っと蒸発をしていく。

「……」
オレは目が点になった。

役に立たたねぇ…

「中身は油だそうですからねぇ…あの水では無駄なんじゃないですか?」
シンシアが覚めた口調でぽそっと呟く。

「だったらお前が増幅して何とかしろよ」
「相手が油で燃える火ですからねぇ…水は逆効果だと思いますよ」

じゃあ何でこいつを連れてきたんだよ!

「テッド他に使える魔法は?」
「…すいません。アレしかボクは使えないんです」

使えねえヤツ。
オレは自分の事は棚にあげて頭を抱える。

「おい。どうするんだよ。お前が連れてきたあいつの魔法は役にたたねぇぞ」
「そうですねぇ…ここはひとまず地上に戻りますか」
彼女が呪文の詠唱を始める。ふっと身体の感覚がなくなって気がつくと洞窟から出ていた。

「お…おい…」
「あそこにいたら私の魔法ではみんな巻き込まれてしまいますから」
そういって2,3言唱えると洞窟の入り口に薄い膜のようなモノが出現する。

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