■増幅師2(3)

「何だこれは?」
「この洞窟全体を魔法の膜で覆いました。空気がなくなれば炎は消えるはずですから…」

相変わらずスケールのでかい魔法を使う。

「さて…と後はスライムが入り口に来る前に中の空気を抜いてしまえば終わりです」
彼女が魔法の膜にぷすっと指を差し込むと勢いよくそこから空気が流れ出る。そしてその膜が洞窟の中に吸い込まれるぐらいになるとまた呪文を詠唱し蓋をした。
「後少しで炎も消えると思いますよ」

「しかし、お前の目利きも当てにならんな…オレと同等にしか魔法が使えなかったぞあいつは…」
待っている間にオレが嫌みを言うと彼女はくすり…っと笑う。
「いやですね、ニルさん。誰がこちらの方で役に立つ人を見つけてくると言いました?」
「は?」

いや…だって…お前…

「そろそろ…いいでしょう。あのスライムを倒せたか確認をしに参りましょうか」


身体の感覚が消え…ヤツがいた場所に戻る。
炎の消えたスライムが部屋の隅にいた。例えるならばすこし黒ずんだ動く油と言うべきか…そいつはゆっくりとオレ達の方を目指してくる。空気を抜くだけでは倒すまではいかなかったようだ。そいつはオレ達を燃やそうという本能だけで動いているように見える。

「…後はこれをどうするか…なんですが…」
少し離れたところで彼女は指を頬に添え小首を傾げ考え込む。

しばらくすると彼女は顔を上げる。何か良いアイディアが浮かんだようだ。
「後腐れないようどっかに飛ばしてしまいましょう」

どっかにって…どこに飛ばす気だ?

「えっと…はい!」
彼女の魔法でスライムの進行方向に妙な穴が現れる。そしてその穴はスライムを吸い込み始めた。すぽんっ…っとスライムを吸い込んだ後、その穴は自然に閉じる。

「…………」
「とりあえずこの世界でないところに捨ててきました。これでいいでしょう…」

オレはまあ…シンシアの訳のわからんスケールのでかい魔法は見慣れてきたからいい加減こう言うもんだと頭で考えるのをやめているがテッドは目を丸くしてその一部始終を見ていた。

「では…仕事は終了ですね…」
彼女は晴れやかにそう言ってオレ達を地上に戻した。

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